介護施設の中で「褥瘡」というのは、特に看護師は過敏になるべき問題です。なぜならば、褥瘡を施設内で発生させるというのは、その施設のケアの在り方を問われてしまうほどの問題だからです。そして、その褥瘡を予防するのは看護師の重要な役割です。
褥瘡が発症するには、ある程度の時間がかかります。多少圧迫が続いても、数分でできるものではありません。つまり高齢者に褥瘡は付きものですが、本来は十分に予防ができます。
それを施設内で発症してしまうということは、その施設の評価を大きく下げてしまいます。家庭で介護している場合は人手もいませんし、器具も揃っていないので難しい場合もあるでしょう。
しかし、施設内では人手が充足してはいなくても、見る目は多いはずです。看護師は、「褥瘡になるような状況が無いか?」「ケア時も皮膚色が怪しい所は無いか?」常に褥瘡を頭に入れて利用者を看ていきましょう。
また、褥瘡になると一気に感染症になる危険性が高まります。褥瘡は、ウィルスや細菌の好培地ですし、回復過程で利用者の体力を奪います。ひどいと入院の必要性や、生命を脅かすレベルの危険性があります。
除圧とは、その名の通り「体の一か所に圧がかかったままにしない」ということです。そのために適宜体位交換、クッションを当てるなどで一か所に長時間圧をかけないようにします。体位交換時は、今まで圧がかかっていた部位を観察しましょう。
押して消える程度の赤みなら、多少の圧迫があった程度でしょう。しかし、赤紫になっていたり、押しても消えない色だと危険です。
また褥瘡好発部位を知って、効果的に行う必要があります。仙骨、大転子部、踵部などが圧迫されやすい部位ですが、その利用者がよくとる姿勢やポーズなどでも好発部位は出てきます。
褥瘡は、摩擦つまりこすれあってしまうことで更に発生しやすくなります。体位交換の時はできるだけ持ち上げること、利用者の体をずらさないことが大切です。
衣類などもできるだけ通気性の良いものにしましょう。湿った状況も褥瘡は好みます。こまめに衣類は交換し、湿潤な環境を予防します。
褥瘡は皮膚組織の極端な酸素不足や栄養不足により起こるので、抹消から中枢で体を拭き上げたり、入浴などで血流を促進することも予防になります。
褥瘡は、酸素や栄養の供給が遮断されてしまうことで発生します。圧がかかりすぎることによって血流が途絶え酸素がいきわたらなくなります。しかし、全身的に栄養が行きわたっていれば、局所のベースの栄養分で褥瘡発生を遅らせることができます。
水分や栄養が摂れている人は、必然的に褥瘡になりにくいです。きちんと水分や食事を摂れる人は、おおよそ歩けたりきちんと座位がとれたりして、元々褥瘡になりにくい体力をもっています。
歩行ができない、寝ている時間が多い人には、食事量を補うための補助食品なども検討して、栄養や水分がいきわたるようにしましょう。
褥瘡は早期に発見すれば軽症で済みます。圧迫されていた部位の色が赤紫で褥瘡になりそうと感じたとします。その時は、その部位が擦れることで褥瘡となるのでラップやフィルム剤で保護して擦れない工夫をします。
出来ればすぐ受診して、これ以上ひどくしない方法を指導してもらいましょう(受診するのは皮膚科です)。完全に褥瘡として出来上がっているときは、すぐに受診し、ケア方法をしっかり教わります。受診時の処置だけでは褥瘡は治りません。
施設内でこまめに処置し、褥瘡対策を徹底することで長時間かけて治癒を目指します。対策法をスタッフに周知徹底することも、看護師の仕事です。
褥瘡予防は地味ですが、とても大切で基本的なことです。特に介護施設内で褥瘡が発生するのは、昔は「施設の恥」と言ったものです。看護師は、褥瘡予防の旗頭(はたがしら)にならなければなりません。
しかし、大いにやりがいを見出せる業務ですので、ぜひ看護師の視点で介護施設内の褥瘡予防に関わっていきましょう。
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